〜 第4章 実行編10(六日目午前)〜

初心者車中泊旅

6月12日(水)午前、晴れ、ODO 7,290km

二十四番札所 〜 二十七番札所

6月12日(水)四日目です。

6時に起床し、昨晩、コンビニで調達しておいた軽い朝食を済ませ、二階のテラスへ出てみます。

目の前に広々とした生見ビーチが広がり、既に何人かのサーファーが、朝の引き潮の中で波乗りを楽しんでいました。空も海もやたらと青くて広くて明るくて、、、

昨晩とは全く異なる趣を見せてくれる「民宿サウスショアー」の朝でした。

とても気持ちが良かったので、しばらくボーッと海を、そしてサーファーたちを眺めてしまい、荷物をまとめて車に行ったときは7時半を過ぎていました。ODOは7,290km。

一昨日の6月10日の朝のODOがちょうど7,000キロ。

昨日6月11日朝が 7,118キロ。

ですから、一日だいたい120kmから150kmを走り、一日だいたい七つから八つの札所を回ることができていることになります。・・・

『いかん、いかん・・! 』(笑)

まったく悪い癖です。

すぐ計算したり、こういう風に考えたりしてしまうので、『今日も100キロ以上は走らなきゃ!』とか、『今日は8ヶ所以上の札所を目指そう!』とか、そういう目標みたいなイメージが浮かんでしまい、それ通りいかないと落胆したり、阻むものが出てくると闘ってしまったり、うまくいかずイライラしたり、してしまうのです。

昨日(6月11日(火)の)太龍寺の、難航と、出会いと、体験が、こういう考え方が自分を縛り、“たった今の目の前の幸運や幸せを感じにくく、曇らせてしまっている”と、いうことを教えてもらったばかりなのですが、すぐこんな風に考えてしまいます。^^;)

まぁ、計算することすべてが悪いわけではないので、それに囚われ過ぎないことが大事なのでしょうね、、、。

二十四番 最御崎寺(ほつみさきじ)

「民宿サウス・ショアー」をあとにした国道55号線は、左手に海を見ながらひたすら海岸線を走ります。

まもなく、東陽町から室戸市に入ります。あと30kmで室戸岬です。

交通量はほぼありません。快適にクルマを飛ばします。

二十四番 最御崎寺(ほつみさきじ)駐車場到着、8時半。

参道はそのまま室戸岬灯台への道でもありました。そこにはすごい数の石灯籠が並んでいます。

最近寄進された?と思われる献灯の中には変わったものが多く、中には米国のマーチン・ルーサー・キング牧師を称えたものまでありました。

何を称えるかは寄進者の自由のようですが、何が来ても否定せず、排他的でない、真言密教の姿勢には少し驚かされます。

山門を兼ねた仁王門をくぐる前に、室戸岬灯台の方に向かいました。灯台そのものに立ち入ることはできませんでしたが、すぐ手前に展望台があり、雄大な景色を望むことができます。

そして少し道を戻って、大きな仁王門をくぐり、境内に入ります。

緑の木々はもちろん多いのですが、徳島の札所とは雰囲気が少し違います。明るいのです。鬱蒼とした木立とか杉の巨木とかに四方を囲まれた感じがないのです。四国山脈の南側に来ているので、植生も違うのかもしれません。とても南国な感じです。お寺の境内の中のレイアウトも面白くて、鐘楼堂の次は大師堂があり、多宝塔が立ち、手水場、納経所と来て、そして一番奥が本堂となっています。順序通り参拝をしようとしますと、先に手水場でお浄めをしなくてはなりませんので、ちょっと行ったり来たりというような動線になってしまいます。

でも、まあ、厳密な動線なんかはともかく、思ったよりゆっくり散歩を楽しんでしまいました。納経/御朱印をいただき、駐車場に降りると9時半になっていました。

二十五番 津照寺(しんしょうじ)

二十五番札所 津照寺(しんしょうじ)は、別名「津寺(つでら)」と呼ばれる通り、入り江でできた室津港を見下ろす小高い丘が境内です。

港町の街中に山門があり、それをくぐると、長い石段があります。ただ下から頂上がすぐ上に見えていましたので、昨日までの徳島の「へんろころがし」系札所の石段で味わった“終わりの見えないうんざりした恐怖”は感じません。

石段を登った上に、何回か見覚えのある竜宮城のようなデザインの大きな門が見えます。鐘楼門と言うようです。

『さあ、石段を登るぞ!』と気合を入れると、山門入ってすぐにすぐの右側に大師堂と納経所がすでにありました。ちょっと拍子抜けします。それに見回しても手水場がありません。

やはり室戸に入ってからのお寺の境内は、レイアウトが少し変わっているようです。

石段を登り、鐘楼門をくぐると、右にまた少し石段があります。それを登ると、手水場がそこにありました。

これはつまり、、、

『登ってきてから浄めなさい、と。』そして『本堂から参拝しなさい、と。』そういうこと??

『ま、いっか、そこは・・・。』

そして、小ぶりな本堂が、港を見下ろすほぼ頂上に佇んでいます。多宝塔などはありません。

少々長い石段はあるものの、大変コンパクトな境内で親しみやすいお寺でした。

午前10時、津照寺を出発。

二十六番 金剛頂寺(こんごうちょうじ)

次の二十六番 金剛頂寺(こんごうちょうじ)までは5キロ程度です。基幹道国道55号線を高知市に向かって走り、元川の河口を右折して、舗装された九十九折りを少し登ると駐車場があります。

時刻は10時15分。まずは少し長めの石段が出迎えてくれました。見ると、厄坂と書いてあります。それを登り切ると、そこが山門、そしてまっすぐ正面に立派な大きな本堂が現れます。とても荘厳です。

納経所もすぐわかりましたが、大師堂は少し本堂から左手前に回り込んだところにあります。大きな本堂と比べると、とても質素な作りをしていました。ふとその横を見ると、「がん封じの椿」という霊木を祀った祠がありました。

このお寺は、室戸市の最後の札所になります。先ほど今日一番に参拝した室戸市最初の札所が最御崎寺(ほつみさきじ)で、別名、東寺(ひがしでら)と呼ばれているのに対し、この二十六番 金剛頂寺(こんごうちょうじ)は、西寺(にしでら)と呼ばれているそうです。

10時50分、金剛頂寺(こんごうちょうじ)出発。次の二十七番 神峯寺(こうのみねじ)から以降は、室戸市を離れ、安芸郡に入ります。

二十七番 神峯寺(こうのみねじ)までの距離は、40キロ近く離れています。ひたすら土佐湾を左に見ながら、海岸線の国道55号線を北上します。実はこの区間の55号線が、一回目のお遍路四国遠征で一番走りたかった道でもありました。

今日は6月12日です。普通だったら雨の季節ですよ。こんな快晴になるなんて思ってもいませんでした。すごく幸運です。

今私は久しぶりに、気持ちの良い海岸沿いのドライブを自走で楽しんでいます。何年ぶりか、何十年ぶりかわかりません。初日の七番札所 十楽寺の「治眼疾目救歳地蔵尊」を思い出し、自分の目でこうして運転できていることを、そして自分の目でこうして景色を楽しめていることを、改めて感謝しました。

二十七番 神峯寺(こうのみねじ)

国道55号線を走ること40分。「右折→神峯寺」の大きな標識があります。

十分立派な道路“標識”で、昨日の太龍寺に向けての林道を案内する古ぼけたただの“看板”とは大違いです。(失礼!)

しかし・・・、標識に従って右折した瞬間から、道路の幅員は極端に狭まってしまいます。^^;)

田んぼのあぜ道のような道を進むと、間もなく「土佐くろしお鉄道」の踏切を渡ります。

車もなければ、人もおらず、電車にいたっては、影も形もありません。

あまりに長閑なので、待避所に車を寄せて停め、エンジンを切り、シートのリクライニングを倒します。

とても静かです。明るいです。眩しいです。

まるで時間が止まっているようでした。

ここは高知県安芸郡安田町 唐浜駅の近くのどこかではあります。

今年2024年、年明け早々に、自分の主治医から車の運転が解禁され、昨年末から探し始めていた小ぶりのキャンパー仕様車が見つかり、2月にはそれが納車され、

『これで四国八十八ヶ所お遍路巡礼がやれたらいいな・・・』

と、思い立ってから半年が経ちました。

そして実際にここまで来ているということが急に、不思議で、現実離れした信じられない出来事のように思えてきました。

大まかな計画としては、『四国遠征は三、四回ぐらいに分けて、八十八箇所めぐりすべてを今年と来年で完遂しようと考えていました。

そして徳島一番札所から「順打ち」で入り、一回目の遠征では、高知市街に近い二十八番 大日寺か、二十九番 国分寺あたりまで行ければ十分かなと・・・。

その後の三十番善楽寺(ぜんらくじ)から三十三番雪溪寺(せっけいじ)まであたりは、すべて高知市街に集中していますので、二回目の遠征は、自走するにしても、フェリーで来るにしても、徳島から高知自動車道によって高知市街付近からリスタートできます。

今回の第一回四国遠征クルマ旅に来る前に、四国全体のお遍路地図を眺めながら、、、

『一回目の旅で、室戸岬あたりの3つの寺(二十六番金剛頂寺あたりまで)まで回れて、そこでどうしても帰らなきゃならなくなったら、、、げ、これ最悪だな・・・』

『こんな半端なところからだと・・帰途に着くにして、もと来た下道を徳島まで戻るのか?、 あるいは、札所を飛ばして高知まで走り、高知自動車道を使って徳島まで戻るのか? めっちゃ悩ましい・・・』

『二回目をリスタートするにしても、一回目で通った下道をなぞるように室戸まで行くのか?、 あるいは高知まで高知自動車道で行ってから100キロ近く室戸へ戻るのか? も、なかなか面倒くさい選択だな・・・』

そのときは、その効率の悪い連結と被り過ぎる道順にぞっとしたものです。(笑)

そして、、、

『一回目の遠征時には、なんとしても、室戸岬と高知市街のちょうど真ん中にポツンと描かれた、この二十七番目の・・孤立したこの寺までは絶対に制覇しなくては!!』

という強い決意というか?自身への脅迫に近いもの?を持った気がします。

そして今、明るい日差しのもと、のどかな田園風景の中に溶け込んでいる自分とソリオと、そして目の前の細い道。・・・

この数キロ先には、そのとき思った「絶対に制覇しなくてはならない二十七番札所」(笑)が、消えることもなく、多分どこへも逃げずに待ってくれているのです。

私はなんだかおかしくて、一人で笑いました。

この旅での一番の収穫は、

「その時その瞬間の出会いや出来事を、良い悪いに関わらず、面白がって慈しみ、幸運だ!と感じることが、なにより大切だ。」と、

教えてもらったことなのでしょうね。

・・・

さて、再びクルマを出すと、これまた想定していなかった突然の急峻な九十九折りが始まります。しかもいきなりすごい斜度です。

『またまたいいように裏切ってくれちゃって、本当に楽しいな・・・』

それもそのはずで、後でガイドをよく読むと、二十七番神峯寺は、土佐湾に面した唐浜からほど近い単独峰の神峯山山頂に築かれていて、標高も600mあるとのことでした。土佐一番目の「遍路ころがし」のようでした。

ただ昨日の徳島県神山山系の二十番鶴林寺二十一番太龍寺と違って、深い山奥ではない上、南傾斜で明るいのです。さらには、舗装が行き届いているため、普通の車でも十分に走りやすい安心感がありました。

11時45分、二十七番札所 神峯寺 駐車場到着。

なんかえらく眺めの良い駐車場です。まるで土佐湾を望む展望テラスです。

クルマを停め、これまでの車道と同様に舗装された山道を少し登ると、大きな山門が構えます。くぐると、とても綺麗に手入れされた庭園のような境内が目に飛び込みます。

手水場でお清めし、鐘を一回つきました。そして珍しいことに、真っ赤に塗装された手すりの石段を登ります。これがまた結構長いです。石段は中腹で90度右に曲がってさらに続いていきます。その両側には、整備された日本庭園が傾斜に沿ってきれいに続いていました。

本堂でお参りし、大師堂に向かう途中、まだ寄進されてから日が浅いのでしょうか?色鮮やかな不動明王の立像がやけに目立って立っていました。リアルで、妙にかっこいいです。前を横切っていくとき、ずっと目が合っていて、ずっと睨まれてるようで怖いです。(笑)

納経/ご朱印をいただき、駐車場に戻ると、まるで真夏であるかのように車の中が熱くなっていました。今日は快晴ですね。そして、行きには気づきませんでしたが、石段からも、下る山道からも、太平洋(土佐湾)がよく見え、大変見晴らしの良いお寺でした。

時刻は12時半。そろそろお腹がすきました。

手打ちうどん いおき屋

神峯寺から下山し、再び海岸線の国道55号線に出ます。そして、土佐くろしお鉄道の駅でいうと、「唐沢駅」から高知に向かって二つ目の駅となる「伊尾木駅」に近いと思われますが、、、

国道55号線沿いに「いおき屋」といううどん屋さんを見つけたので、そこで昼食にしました。

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