10月3日(水)天気:雨 出発時ODO:9,660 km 五十四番〜五十九番
第五十四番札所 延命寺(えんめいじ)
7:00 ビジネスホテルつよしにて起床。
残念、雨音は静かながら確実にまだ窓を叩いていています。少し薄暗いダウナー気味の朝でした。ただ深呼吸をしてみると、都会と違って雨の匂いは心地いいです。
「おはようございます。・・・」
決して広くはない民宿のリビングに出て、女将さんに“昨晩遅くまで付き合ってもらったお礼”を言い、朝食をいただきました。炊きたてのご飯と手作りの味噌汁が体に染み渡ります。
そして・・、すでに冷めてしまっている、この“なんでもないアジのひらき”の見事に旨いこと!。
『やっぱりメシは手作りがいいなぁ・・・』、実感します。
バイク遍路のYさんはすでに出発したとのこと。
『雨のバイク、大変なんだろうな。・・・どうぞお気をつけて。』
結局Yさんには昨日のお礼も、挨拶も出来ずじまいです。二日ぶりのベッドの心地よさに負けて寝坊してしまいました。少し反省します。そして自分も出発準備を整え、気持ちを切り替えます。
8:00 ビジネスホテルつよし出発。
国道196号線は海岸線を離れ、ここより内陸に入ります。今治の北にある瀬戸内海に突き出た半島をバイパスし、ほぼここから真東に今治市街に向かいます。



↑ 牧歌的な田園のなかにある「つよし」 Google Mapは「つよし」の場所 つよしは「津が吉」、”旅で寄るのに良いところ”という意味だそうだ。
20分で今治市街地に入ります。静かな住宅地の真ん中に延命寺の駐車場はありました。
8:20 第五十四番札所 延命寺駐車場到着。
まるで古民家の入り口のような門です。こんな質素な山門はこれまで見たことがありません。境内もコンパクトにまとまっていて古い武家のお屋敷のような佇まい。小綺麗に整った庭園が雨に濡れそぼっていい感じです。境内にはほんのりと線香の香りが漂い、凛として静謐な雰囲気が広がっています。
小さな手水舎で手を清めてゆっくり参拝。傘をたたむ音や足音さえも、雨音とそのリズムに溶け込んでいきます。
朝一番、決して大きくはありませんが、しかしとてもいいお寺でした。






↑ 本日最初の札所「延命寺」。コンパクトで「昔のお武家さんの古民家」のよう。
第五十五番札所 南光坊(なんこうぼう)
8:50 延命寺を出発。
次の南光坊まで約4km。国道196号線を離れ、県道38号線を今治駅方面に進みます。いよいよ今治市街地中心部に近づきました。道も片側2車線と大きくなり、交通量も急に増大します。



↑ JR四国 “予讃線”の高架下。右は今治駅、もうすぐ五十五番南光坊。
9:00 第五十五番札所 南光坊 駐車場に到着。
ここはJR今治駅に程近い、今治市街地の中心部です。目の前を通る国道317号線に面して、とても大きくて迫力のある立派な山門(二層半の仁王門)が建っています。境内はフラットで、とても広大です。最も奥に鎮座する本堂と、少し手間にある大師堂の間を・・・、まさにお寺の境内のど真ん中を・・・、一般道が横切ってしまっています。そしてその道には参拝者でない地元の住人と思われる人や自転車が普通に往来しているのです。興味深い光景でした。






↑ 今治市街地の真ん中にある「南光坊」。境内の真ん中を一般道が通る。駐車したのはその一般道の脇、ちょうど大師堂の目の前。街とお寺、生活と信仰は渾然一体。
9:15 南光坊を出発。
第五十六番札所 泰山寺(たいさんじ)
次の札所泰山寺は、南光坊(JR今治駅)から4kmほど内陸に戻った西瀬戸自動車道(通称:しまなみ街道)の今治ICのすぐ近く、今治西部の山に差し掛かる傾斜地に建っています。
9:30 第五十六番札所 泰山寺 駐車場に到着。
すでに辺りは市街地から離れた静かな田園が広がっています。
クルマを降り、住宅と住宅の間の細い路地を進むと、城郭のような石垣が現れます。その中が泰山寺の境内です。
門をくぐると、綺麗に整えられたお庭と整然とならぶ諸堂が目に入ってきます。シンプルで潔いお寺でした。
心が落ち着きます。・・・



↑ 田園と住宅に囲まれて静かに佇む「泰山寺」
↓ 泰山寺境内の様子
9:55 泰山寺を出発。次の札所も近いようです。
第五十七番札所 栄福寺(えいふくじ)
今治西部の山麓を斜面に沿って3kmほど行くと、泰山寺と同じように山を背にした傾斜地に建つ第五十七番札所 栄福寺(えいふくじ)があります。
10:05 第五十七番札所 栄福寺 駐車場に到着。
見ると、今朝からすべての札所の駐車場で出遭う「川崎ナンバーのAudi」が、ちょうど駐車したところでした。そして私と同じくらいの歳格好のおじさんが降りてきます。向こうも「横浜ナンバー」のこちらのソリオに気づいていたようでした。
ここ四国で東京や東京近郊県ナンバーの車に出会うことはほとんどないので、お互いに親近感が湧きます。当然、短い会話を交わします。彼は、私のような区切り打ちでなはなく、今回限りの通し打ちで回っているとのことでした。
栄福寺への参道は、緩やかな坂道と石段により斜面を左回りにループしながら登っていく一本道です。最奥に本堂があります。一本道の両側に慎ましく諸堂が並ぶ境内はどこか牧歌的です。そして雨は、お寺の風情をより閑静なものにしていました。






↑ 雨の似合う「永福寺」
10:35 栄福寺を出発。
次の札所までもだいたい3kmと距離は近いのですが、平地や山裾は終わり、いよいよ山に入ります。道はその幅員を極端に狭めていきます。
第五十八番札所 仙遊寺(せんゆうじ)
雨の中、細い葛折りの道を登りました。こんな山道は久しぶりです。時々木々の隙間から瀬戸内海が見えていたのですが、登るにつれ霧が徐々に濃くなり、やがて眼下に広がるはずの遠くの海や今治市街は見えなくなりました。
10:55 第五十八番札所 仙遊寺 の駐車場らしき広場に到着。
さっき、ぼんやりと霞んでいく道沿いに忽然と現れた山門らしき大きな門は遥か下にあります。
駐車場(?)の方が、参道や山門よりも随分と高いところに設置されているようでした。
『ホントにここにクルマを停めていいのかな??』、少し躊躇いがありました。が、
「ようこそ仙遊寺へ」というPOPな看板もあるので、『まぁ、いいのだろう。』と、よぎるためらいを押し殺して歩き始めます。


↑ 仙遊寺の駐車場らしき広場、 山門よりもかなり登ってきたところにある。
境内は近くで、すぐに分かりましたが、標高が300mあるので諸堂のある山の頂上はすごくガスっています。
この札所の宗派は「高野山真言宗」。 境内に入ってしまえばそれほど大きなお寺で無いことがわかりますが、保守本流らしく、山岳信仰総本山の風格をそなえていました。
濃い霧は、渋いお寺をさらに幻夢的な設絵に変えています。本堂と大師堂は隣り合わせで分かりやすかったので、迷うことなく参拝でき、納経/御朱印を済まして駐車場へ戻りました。
誰一人とも会うことのない静かで寂しい霧の中の参拝でした。
こんな閑寂もまた一興です。



↑ 霧で煙ってより幻想的に佇む山の上の「仙遊寺」
11:25 仙遊寺を出発。
連続するかと思いきや、山寺はこの仙遊寺ひとつだけで、次の札所はまた海の近くです。9kmほど海岸方面に戻るようです。
第五十九番札所 国分寺(こくぶんじ)
クルマを出し、先ほど登って来た葛折りの坂道を下ります。雨は止む気配を見せませんが、平地に降りると霧は晴れて少し視界が良くなってきました。
12:00 第五十九番札所 国分寺 到着。
仙遊寺があった方を振り返ると、山ぜんたいが雲に覆われ何も見えませんでした。
ここ国分寺は明らかに海に近い平地の里寺です。山門はありません。代わりに神社に見られるような巨大な二つの石灯籠に挟まれた入り口が迎えてくれます。境内はほどほどコンパクトに出来ていて、本堂/大師堂も隣接していてお参りはし易かったです。
境内は綺麗に整備されていて、無駄がありません。少しだけ高台になっているので、今治市郊外の長閑な田園風景を見渡すことができました。






↑ 海のそばの平地に建てられた「国分寺」。見渡す風景も境内の様子も牧歌的で心が和む。
12:15 国分寺駐車場に戻りました。
実は今日は、札所巡りはここでおしまいです。もともと今日の午後は観光をしようと考えていました。
今治城、吹揚神社(ふきあげじんじゃ)、今治港、今治港物産館、など、近くで行きたいところがいくつかあったからです。
そば家”一創庵” と 今治観光
お腹が減っていたので、まずは昼食をとります。
12:30 今治港近くの蕎麦屋「一創庵」で“肉そば”を堪能。美味しかったです。
熱々の蕎麦汁と甘辛い肉が雨の冷たさをしばし忘れさせてくれました。店内はほとんどが地元の人たちです。談笑が響き、ほっとする空間でした。






↑ そば家 一創庵。注文した「肉そば」。思っていたよりはるかに美味しくてびっくり。(失礼!)
13:30 今治港岸壁を散策し、物産店の並ぶアーケードを文字通り“ブラブラ”し、今治港物産館で名産の今治タオルをいくつか購入しました。そして今治城へ。
14:30 今治城は、現在では周りは埋立地となっていて市街地の中にあるように見えますが、そもそもは海に突き出た「海城」でした。なのでお堀はもとは海です(もちろん今でも潮位と一緒に水位が変化します)。日本にある平城の中で、これほど広いお堀は他に類を見ないでしょう。






↑ 今治港、 港近くのアーケード、 今治城天守、 吹揚神社石柱
城内では吹揚神社に立ち寄ります。城郭の内部にこれほど大きな神社があるとは知りませんでした。たいへん立派な社殿です。これまでずっとお寺を巡っていたため、ともすると静かに合掌しそうになりますが、ここは神社ですので「二礼二拍手一礼」。手は合わせません。
そして・・・、
もし天気が良ければ、午前中に参拝した泰山寺そばの今治ICから「しまなみ街道」に入り、瀬戸内の島々を渡って尾道まで行って一泊しようか・・・とも考えていたのですが、今日明日のお天気を鑑みて、残念ながらそれはやめました。
いつか、またの機会に「しまなみ街道」は走ってみたいと思っています。
その代わりではないですが、今治の東に広がる織田ケ浜を散策。開放感たっぷりの海岸です。
天気がよければ燧灘(ひうちなだ)が一望で、もっと気持ちが良かったことでしょう。



↑ 今治市の東側に広がる織田ヶ浜 今日は遠くの島々がまるで見えない。
石鎚山サービスエリア
15:30 今治湯ノ浦ICから今治小松自動車道に乗ります。ほとんど交通量はなく空いていたので、雨の中でも快適なドライブでした。BGMはフロントガラスを叩く雨の音。車窓から見えるゆっくりと流れていく景色はモノクロームで、どこか茫漠とした立体感のない絵画のようでした。
16:00 石鎚山サービスエリア(上り)に到着。
雨はますます勢いを増し、車から外へ出たくありません。(^_^;)
ぼんやりと今日の出来事を回想しているうちに、運転席に座ったまま少し眠ってしまいました。
フードコートで早めの夕食を済ませると、もうこれ以上は動きたくなかったので(^_^;)、、、
そのままこの日はこのサービスエリアで車中泊です。






↑ 石鎚山サービスエリア(上り)。雨の一日が終わる。
今日は終日雨に包まれました。渋く深い一日でした。
四国遍路の旅もそろそろ三分の二を過ぎます。次回(明日10月4日)は、いきなり四国霊場一二を競う厳しい山岳寺「六十番 横峰寺(よこみねじ)」からです。
※写真だけですが、以下のURLからインスタで六十番横峰寺以降の様子が見れます。よかったらご覧ください。

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