第三回実行編3 クルマ遍路旅 第三回実行5日目11月26日(火)。 道の駅「香南楽湯」を発ち、高松市内の八十三番一宮寺から、最後の札所となる八十八番大窪寺の結願参拝までと、徳島のベースキャンプ地である「道の駅いたの」での車中泊の様子をお話しします。
11月26日(火) 天気:曇り時々雨 出発時ODO 10,466km
この記事でわかること(要約)
2024年に3回に分けて行ったクルマお遍路旅。その最終日である11月26日(火)に、香川県高松市の八十三番札所・一宮寺から、さぬき市の八十八番札所・大窪寺までの6つの札所を巡って四国霊場を結願(完遂)するまでの一日を詳細に描きました。さらに最終大窪寺での歩きお遍路さんとの出会いや、結願の余韻を胸に向かった徳島「道の駅いたの」での車中泊の様子も収録。区切り打ちの旅のフィナーレとして、静かな達成感と情景の美しさを読むことができます。
第八十三番札所 一宮寺(いちのみやじ)
9:30 道の駅「香南楽湯」を出発します。目指す八十三番一宮寺までは平地を4km、すぐ近くです。


↑ 出発前の道の駅「香南楽湯」 この後ほぼ一日中雨の天気になりました!
残り6つの札所の参拝で、このお遍路の旅もとうとう結願(コンプリート)です。今日は八十三番札所一宮寺からの参拝ですが、普段通り普通に回れれば、今日中に全ての四国霊場の参拝が終了するでしょう。
今年(2024年)3回に分けた区切り打ちクルマお遍路の旅も今日で最終日です。ここまでなんとか無事に走って来られたことに感謝します。
9:40 八十三番札所 一宮寺(いちのみやじ)に到着です。 畑や住宅などに囲まれた典型的な里寺です。駐車場や境内などを区分けする塀や壁などは全くありません。
人々の生活に溶け込み、牧歌的風景の中にどこまでも馴染んでいる小ぶりのお寺でした。






↑ 田園に溶け込む長閑な里寺「一宮寺」 塀や石垣などお寺を囲むものは一切無い
第八十四番札所 屋島寺(やしまじ)
10:05 一宮寺を後にします。次の八十四番 屋島寺までは18kmです。
高松市街中心部の国道11号線を東へ走ります。やがて左折して屋島スカイウエイに入ります。爽快な山登りドライブを10分続けると山頂です。
11:00 屋島寺の山頂駐車場に到着。
巨大な観光地のような広い駐車場です。駐車料金は時間制限無しの300円でした。
屋島寺は高松市街のすぐ東にある鋭く瀬戸内海に迫り出した半島(屋島)の山頂にあります。標高はおよそ300m。さらに東側には、源平屋島古戦場があります。とても風光明媚で、いいところです。天気がよかったら瀬戸内海を一望でしたが、今日は雨模様、瀬戸内は霞んでしまっています。惜しいですね。
お寺は山の上とは思えないほど広大で平坦な境内を持ちます。山門は朱色と白の配色の一層の大門で、まるで神社を思わせるデザインでした。そしてそれをくぐると、渋い色の大きなお堂が整然と立ち並んでいます。
本堂にほど近いところに蓑山大明神(みのやまだいみょうじん)という神社があり、真っ赤な小ぶりの稲荷鳥居が幾重にも並び、その先に質素な祠が佇んでいました。祀られているのはお稲荷さん(キツネ)ではなく、お狸様(タヌキ)でした。神仏習合ということより“狸が祀られている”ことが、とても面白いです。






↑ 台地状の屋島の上に広がる屋島寺 天気が良ければ瀬戸内海を一望できるテーマパークのよう
11:30 屋島寺出発。
ラーメン来来亭
屋島スカイウエイを下り、再び国道11号線に出たところでランチにしました。全国チェーン展開されているラーメン来来亭です。京風ラーメンの中でも個人的に好きな背脂系のお店です。



↑ ラーメン来来亭 高松屋島店 お店の場所は右スクショのGoogleMapを参照
第八十五番札所 八栗寺(やぐりじ)
屋島から源平の古戦場となった細い湾を挟んで真向かいに、五剣山という屋島より険しい山(というか、こちらも瀬戸内海に突き出た山岳半島)があります。この山の南側山腹に八五番 八栗寺があります。
ランチをとった国道11号を少し東に行ったところを、「八栗登山駅」に向かって左折します。この辺の住所は高松市牟礼町牟礼というところです。のどかな田園傾斜地を少し登ると、これまた広い駐車場が現れました。
12:20 八栗ケーブル「八栗登山口駅」到着です。
八栗寺に登る八栗ケーブルカー(往復1,000円)のふもとの駅です。
ケーブルカーは朝7時半から夕方5時まで15分間隔で運行しています。片道の走行時間はほんの5分程度とのことで、レトロなデザインの可愛い車両が出迎えてくれます。これでも一度に100人以上の乗車が可能とのことでした。
南西斜面に設置されているので、晴れていれば先ほど登っていた屋島がほぼ正面に一望できるようでした。
12:40 ケーブルカーの山上駅に着き、
歩き始めるといきなり石造りの鳥居があります。八栗寺は八栗聖天宮という神社でもあります。境内も八栗寺と共通で、見事に神仏混淆している仏閣神社でした。
先ほどの屋島寺(なだらかな山の頂上)とは違って、こちらは険しい山の中腹のようでした。諸堂は限られた段丘状の細長い平地に、肩を並べるように建立されていました。見上げると、すぐそこに急峻な五剣山の峰々が聳えています。






↑ 八五番八栗寺は「八栗登山口駅」から八栗ケーブルで5分の山頂にある 紅葉が映える
13:15 八栗寺参拝を終え、八栗ケーブル「八栗山上駅」を出発します。
13:30 ふもとの八栗ケーブル「八栗登山口駅」駐車場をSOLIOで出発し、次の八十六番志度寺に向かいます。
志度寺までは8km。国道11号線へ戻り東に向かえば15分ほどで着くはずです。
第八十六番札所 志度寺(しどじ)
牟礼(むれ)から少し国道11号線を東へ走ると、讃岐牟礼(さぬきむれ)という地名が現れます。ここはもう高松市は終わり、さぬき市に入っているようでした。左側には波穏やかな志度湾が広がっています。志度寺はさぬき市役所に近く、さぬき市中心部にある三軒ぶりの里寺です。
13:55 八十六番志度寺到着。
涅槃の道場香川県(巡礼最後の県)に入ってから、お寺に大小の草鞋(わらじ)が奉納されている風景をよく見かけるようになります。お遍路も終盤に至り、それまで無事に導いてくれた自身の履物に感謝して捧げているのでしょう。
志度寺の山門には両脇の仁王像とともに、像の背丈ほどある大きな一対の草鞋が立てかけてありました。お遍路終盤の札所であることを象徴的に表現しているようです。
山門をくぐると境内は鬱蒼としていました。背の低い広葉樹の森に覆われているのです。木々はところどころ紅葉し、地面には季節外れの綺麗な花を咲かせている植物もあります。それらが雨に濡れ、輝き、閑寂とした素敵な風景をかたち作っています。小ぶりながらも凛とした古いお堂たちは、決してその清楚な雰囲気を壊さず、とても渋い独特の佇まいを見せていました。聞くと、諸堂は江戸時代に一度再建されたが、その後は戦火を逃れ、今は“国の重要文化財”に指定されているとのことです。






↑ 鬱蒼とした緑に囲まれた志度寺 雨の中にひっそりと隠れるように重要文化財の諸堂が建つ
14:25 志度寺を後にしました。次の八十七番長尾寺までは7kmと少しです。
第八十七番札所 長尾寺(ながおじ)
今日ずっと走ってきた国道11号線を離れ、今度は内陸に向けて県道3号線を走ります。あたりは長閑な田園風景が広がっていきます。
14:40 八十七番 長尾寺 駐車場着。
駐車場も山門も広々した街区の真ん中にあります。山門は鐘楼門となっていて、くぐる時に鐘を撞くことができます。先ほどの志度寺と同様、両脇に大きな草鞋(わらじ)の奉納がありました。
山門を入るとすぐに大きな楠の木があり、その木以外は、先ほどの志度寺とは打って変わって境内に木々は無く、広々と境内全体が見渡せます。視覚的に抜けが良い上に、本堂や大師堂、その他のお堂たちも整然と並んでいて、わかりやすくお参りのし易いお寺でした。
そしてなんとここは、4つ目の天台宗寺院でした。





↑ 広々と抜けの良い里寺「長尾寺」 整然としている
15:10 長尾寺出発。
次はいよいよ最後の結願札所 八十八番 大窪寺です。17kmほど離れています。
第八十八番札所 大窪寺(おおくぼじ)
長尾寺からさらに県道3号線を内陸(南)へ向かいます。道は徐々に斜度を上げていき、やがて山道となります。といってもうんざりするような細い林道ではありません。2車線をキープした幅の広い整備された舗装道路です。雨の中、ゆるい葛折りが続きます。10分も走ると讃岐山脈の峠を越えて、内陸を徳島まで伸びる国道377号線に合流します。そして少し行くと大窪寺への分岐があり、まもなく大窪寺の駐車場が分りました。
15:40 大窪寺駐車場着。
車から降りると、まず2本の石柱が出迎えます。右の石柱には「醫王山 大窪寺」の文字、そして左側の石柱には「四國霊場 結願所」と彫られています。
『やっと、、ここまで来たな・・・』
最後の札所に着いた高揚感とともに感慨もひとしおです。
すると、
「すみません。シャッターをお願いしてもいいですか?」
たぶん私より少し若いであろうお遍路さんが近づいてきました。特に長旅でボロボロに汚れているわけではないのですが、何故だか“歩きお遍路さん”は一目でわかります。そして不思議な畏敬を感じます。
わたし:「いいですよ。どちらからですか?」
お遍路:「大阪です。今日が霊山寺(徳島県の第一番札所)に入ってからちょうど50日目になります。」
わたし:『すげーな・・・この人! 歩きに歩いて、今まさに“順打ち遍路”を歩き切ったんだ・・。50日もかけて・・・。』
わたし:「そうですか、大阪から。50日ですか。結構早いペースでしたね。お疲れ様です。・・・歩きの方は本当にすごいですね。尊敬します。 石門、両方とも入れますか? 全体が少し小さくなりますが・・。」
お遍路:「うーん、では、両方入れた一枚と、こちらの結願石柱だけのやつと二枚とお願いしてもいいで すか?」
わたし:「もちろんですよ。」 「あ、私も写真お願いしていいですか?」
お遍路:「もちろん、喜んで」
・・・
何気ない会話と写真の撮りあいをしただけですが、お互いに巡礼をやり切ったことへの尊敬と祝福が込められていることを感じます。
歩き出すと、すぐ上に立派な山門が見えます。二層半のとても大きな仁王門です。(後で知りますが、この最後の札所の仁王門は高さが13m、四国霊場で最も大きな仁王門であるとのことでした!)
その大きな門の前後に、ところどころ赤や黄に色づいた木々が見え隠れし、雨で濡れそぼった灰色の山寺の風景に彩りを添えていました。



巨大な仁王門をくぐるとすぐ左に鐘楼です。そしてそのすぐ隣りに質素な一層の大師堂があります。
聳え立つ山門とは裏腹に、たどり着いたお遍路をとても優しく迎え入れている気がしました。
お参りして本堂に向かうとすぐ左側に、それはそれはたくさんの金剛杖が奉納されているガラス張りの部屋がありました。天井からは大きな銅製の錫杖オブジェが空へ突き出ています。
ここは寶杖堂(ほうじょうどう)と言うお堂で、お遍路さんとともに旅をしてきた金剛杖が数多く奉納されているとのことでした。



↑ 寶杖堂(ほうじょうどう)には多くの金剛杖の奉納が・・・ 木々は大きく、お堂はとても質素
そしてその奥が本堂なのですが、実は本堂は大師堂よりも小じんまりとしていました。小ぶりの大師堂といい少し拍子抜けですが、その右隣りのさらに小さな阿弥陀堂とともに、渋く、静かに、粛々とお遍路の結願を祝ってくれているようで・・・、達成感が心に静かに染み渡ります。
納経所においては御朱印をいただいた上、2,500円をさらに支払って「結願証書」なるものをいただきます。もちろん、お金をかけて結願証書の発行をするかしないかはお遍路さんの自由ですが、ほとんどの人がお遍路達成記念として発行してもらうようです。



そうして全ての所作を終え、納経所から外へ出ると、きりっと冷たい空気が全身を刺してきました。
ここは標高約800mある矢筈山(やはずやま)の山腹です。山腹といっても結構高いところだと思います。東側には徳島県に跨がる山並みが低く垂れ込んだ雲の中に水墨画のように広がっています。四国の旅の途中に何度となく見てきたような風景ですが、全ての札所巡礼を終えた身として見る風景はまた一味も二味も違うことを知ります。


↑ とうとう手にする「結願証書」 水墨画のような四国の山々
ベースキャンプ 道の駅いたの
私の札所を巡るお遍路のクルマ旅は、これを持って目的を一旦達成したわけですが、このことを和歌山県高野山霊場の御廟まで行って空海さんに報告する・・・所謂「満願成就」にこの足で向かおうと決めていました。
明日11月27日(水)は10:55発の南海フェリーで徳島港から和歌山へ渡る予約をランチの時に既に組んでいます。
ですので徳島港とは言わないまでも、今日中にできるだけ徳島市街に近いところに辿り着き、宿泊する必要がありました。二回目の遍路旅記録でもお話ししましたが、やはり四国クルマ遍路のベース基地は「道の駅いたの」になります。私は迷うことなくカーナビの目的地を「道の駅いたの」にセットします。
16:30 大窪寺を出発。
大窪寺から「道の駅いたの」へは、まず国道377号線を引田に向かい、引田ICから高松道(高速道路)に乗り板野ICで降り、県道「徳島引田線」で行くことができます。距離は60kmくらいありますが、順調に行けば1時間ちょっとで行けるはずです。
ただし今は11月も下旬で、暗くなるのは思いのほか早いです。出発してすぐにあたりは暗くなり、そして雨足も激しくなってきました。
377号線は国道とはいえ、片側1車線のほぼ普通の道です。東かがわ市の山間いをクネクネと続いています。ほとんど街灯はなく真っ暗で、目の前の道路を照らしているのは我がSOLIOのヘッドランプだけでした。雨はますます強くなり、ワイパーを最速全開で振りますが、視界はかなり悪かったと思います。



そんなドシャ降りまっ暗の峠道運転を1時間近く続けたでしょうか・・・、山を下りきりやっと少し開けたかなと思ったら、明るく照らし出された「引田IC」の電飾道路標識がやっと見えました。
そしてここから高松自動車道に乗ってしまえば早いもので、ものの10分で板野インターに着くことができました。
途中で軽く夕食を済ませ、夜食と明日の朝食をコンビニで購入し、、、
19:00 道の駅いたの に到着です。
やっと着きました。疲れていたのか、雨が酷かったのか、随分と疲れた運転を強いられたようです。道の駅に着いた頃、身体はクタクタになっていました。そして皮肉なもので、目的地に着くとまもなく雨も小振りになってきます。「道の駅いたの」は懐かしさに溢れています。この三回の区切り打ちお遍路旅の途中に、何度訪れたことでしょうか。最初に四国を訪れ最初に車中泊をしたのがまさにここでした。以降、何度となく車中泊で使わせていただき、2度ほどすぐ隣りの「ホテルAZ」に泊まったこともありました。陸路の場合は淡路島を超えてすぐにあり、そして海路でも徳島港に近い板野市は地理的にもベストポジションで、そこにこんな便利で新しい道の駅があるのですから使わないほうが不思議です。


小降りの雨の中を少し散策し、全てのお店が既に閉店していることを確かめた後(19時を過ぎていますから当然なのですが、少し残念・・)は車中泊準備を整え、さっさと寝てしまったと思います。
全ての四国霊場お遍路を終え、次回は和歌山県に渡ります。お楽しみに・・・
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